第6章 初めて歩く二人の距離
それから私たちは悠の服や靴を見て回った。
悠が普段から愛用しているブランドの店は、シンプルな作りのものが多いように感じられたが、彼の選ぶ服やパンツはどれも彼によく合っていた。
彼のセンスの良さは店員すら感嘆するほどで、あるお店では店長が登場し、試着した悠の姿を次々と撮影していた。
モデルと同等の容姿と身長、スタイルの良さを持つ悠は、着こなしやポージングも上手く、気がつくと周囲には人だかりが出来、オーディエンスに囲まれての撮影会となっていた。
一通り、撮影が終わり、そのお礼にと悠は服をもらっていた。
「すごいね…!悠!流石と言うか……ちょっと驚いちゃった。」
悠「あー…実は前にも何回かこーゆーのやったことあるだよね……。……正直、俺、モデルじゃないしすっげぇ恥ずかしいけど。」
後頭部を掻きながら困ったような笑顔で、未だに溜まったままの人だかりにちらりと視線を送る。
瞬間、キャーっと響く甲高い女性たちの声。
女性客1「ねぇ!今、こっち見たよね!?はぁ~やばいっあの人めっちゃ格好いい///!!」
女性客2「ヤバイよね!?ヤバイよね!?超ハイスペック♡♡♡」
女性客3「やっぱモデルかな?背も高いし、顔ちっちゃいし!………つか、隣の女はやっぱ彼女?!」
女性客らの"彼女"という言葉にピクリと反応する私。
それに気づいた悠は私の手をそっと握ると、柔らかな笑みを向けてくれた。
悠「……巻き込んじゃってごめんな?……代わりに何でも言うこと聞くから。」
彼の笑顔に先程まで胸に詰まっていたものがスッと軽くなる感じを覚える。
私は悠の眼を見据え、微笑んだ。
「ううん…。モデルさんみたいな悠も格好良かったから……何かいつもと違う悠が見れて得しちゃった♪」
すると、目の前の悠の顔に赤みが差し、繋がれた手に力が籠った。
悠「…… 花音に、格好いいって思ってもらえたなら…恥ずいことやった甲斐があったわ。………本当、格好いいなんて言われても微塵も嬉しくなかったのに、お前に言われるとメチャクチャ嬉しい……///」