第1章 ゾルディック
ホテルのバーでは、間接照明が少しずつ落とされていた。
「平成不況の頃から、うちは大変だったんだよ」
イルミはグラスを置いた。
「不動産も株も暴落してね。親父は何度も会社を立て直してきた。でも時代が変わるにつれて、従来のやり方が通用しなくなってきた。……勿論俺も手伝ったけど、なかなかうまくいかなくてね」
「それで?」
「だから、家族総出でミルキを変えようとした。ミルキにも、もっとしっかりしてもらおうと思ったんだ」
イルミは当時を思い出すように、少し視線を落とした。
「ゲームばかりしないで体を鍛えろとか、世の中を知るために外へ出ろとか。人付き合いも増やせって、家族みんなで散々言ったよ」
「それで、ミルキは変わったのか?」
「ううん。ますます部屋から出なくなった」
クロロは眉を上げた。
「逆効果だったわけか」
「そうみたいだね」
イルミはあっさりと認めた。
「でも、そうこうしているうちに、いつの間にかミルキが株を買い占めてたんだ」
「……え?」
「議決権の過半数を持ってる」