第13章 密会〜五条家
「……すまない。少し、夢中になった」
「……ぅ…ん…いいよ」
私もそのまま流されそうだったとは言わない。
そのまま私は彼の頬に手を添えた。
「……脹相?」
「何だ」
「好き」
脹相は一瞬目を見開き、それから私をぎゅっと抱きしめた。
「……俺もだ」
耳元に落ちる声が、いつもより甘い。
「……本当に、好きだ」
何度もそう伝えてくれる彼が愛おしくて、私は彼の背中を撫で続けた。
「……さあ」
しばらくして、私は脹相の胸をそっと押した。
「そろそろ、一緒にご飯作ろっか?」
脹相が顔を上げる。
「……もうか?」
「もうか、って。早くしないと五条さん、帰ってきちゃうよ?」
「……そうだったな」
少し名残惜しそうな顔をする彼に、私は笑ってしまった。
「お腹空いたでしょ?」
「ああ。だが……」
「だが?」
「……もう少し、お前とこうしていたかった」
「ふふ。じゃあ、ご飯を作り終わったら、くっついていよう?」
そう提案すると、脹相はようやく納得したように頷いた。
二人でキッチンへ向かう。
私はエプロンをつけ、冷蔵庫から食材を取り出した。
「じゃあ、脹相は野菜を洗ってくれる?」
「ああ」
素直に返事をした脹相は、私の隣に立った。
……立ったのだけれど。
「脹相、ちょっと近いかも」
「そうか?」
「うん。もう少しそっち……」
言い終わる前に、後ろから腕が回ってきた。
「……こうしていては、駄目か」
「えっ、ちょっと……!」
背中に伝わる温もり。
肩口に頬を寄せられ、私は思わず笑った。
「脹相、料理できないよ?」
「……分かっている」
「分かっててやってるでしょ?」
「ああ」
あまりにも堂々とした返事に、私は吹き出してしまった。
「もう!」
それでも、彼の腕をほどく気にはなれなかった。
脹相は私の肩に頬を寄せたまま、しばらくじっとしていた。