第16章 雄英文化祭編
峰田に至っては、信じられないものを見たように口を開けている。
「嘘だろ……。あの爆豪が女の子をエスコート……?しかも、あんなに自然に……?」
「エスコートっていうか、ほとんど強制連行じゃない?」
麗日が苦笑いを浮かべる。
「でも、爆豪君が誰かのことをあんなふうに気にかけるなんて……」
「文化祭の時から、ちょっと変だったもんね」
芦戸が顎に手を当て、何かを思い出すように目を細めた。
夜遅くまでの練習。
ライブの後、おもちとエリちゃんを連れて歩いていた時のこと。
そして、最近やけに彼女の様子を気にしていること。
ばらばらだった出来事が、頭の中で一本につながった。
「……はっ!」
芦戸が勢いよく顔を上げた。
「そういうこと!?」
「何がだよ、芦戸?」
切島が尋ねる。
「今、爆豪、おもちを強引に連れてったよね!?」
「いや、見てたけど……」
「無理やりにでも恋愛に結び付けたいっ!!!!」
そう叫ぶなり、芦戸は二人が去っていった方向へ走り出した。
「お、おい、芦戸!?」
切島が慌てて後を追う。
「ったく、あいつら何やってんだよ……!」
「俺も行くー!」
上鳴まで追いかけ始め、廊下は一気に騒がしくなった。
そんな一連の光景を、少し離れた場所から眺めていた緑谷出久だけは、笑っていなかった。
彼は、先ほど爆豪がおもちの手を取った瞬間を思い返していた。
あの幼馴染が、他人の都合を考えずに誰かを引っ張っていくこと自体は珍しくない。