第16章 雄英文化祭編
文化祭の出し物が決まってからというもの、雄英高校の寮は、以前にも増して活気に満ちていた。
クラスはバンド担当、ダンス担当、演出担当に分かれ、それぞれが本番に向けて準備を進めていた。
その中でも、ひときわ熱気に包まれていたのが、バンド担当の練習スペースだった。
「よし、もう一回合わせよう!今度は間奏まで通してみるよ!」
耳郎が声を上げる。
今回のバンド編成は、耳郎がベースとボーカル、おもちがエレキギターとボーカル。上鳴と常闇もギターを担当し、八百万がキーボード、そしてドラムは爆豪勝己という、なかなか豪華な顔ぶれになっていた。
当初は、耳郎が中心となって曲を作り、みんなで演奏を合わせていく予定だった。
ところが、練習が始まって早々、思いがけない問題が発生した。
いや、問題というより、予想外の才能が発覚したと言うべきか。
「……え、ちょっと待って」
耳郎は、エレキギターを抱えたおもちをまじまじと見つめた。
「おもち、今のコード、もう覚えたの?」
「ええ。耳郎さんが教えてくれたとおりに弾いてみたのだけれど……何か違っていたかしら?」
「いや、違ってない!違ってないけど!」
耳郎は思わず声を大きくした。
「初めてエレキギターに触ったんだよね!?」
「そうね。ギター自体、ほとんど経験がないわ」
「ほとんどっていうか、初めてじゃん!」
上鳴が横から口を挟んだ。
「ちょっと待ってくれよ。俺なんて、まだ指がコードの形に慣れてねぇんだけど!?」
「上鳴くん、焦らなくても大丈夫よ。ゆっくり覚えていけばいいわ」
おもちは、にこりと微笑んだ。
その言葉が、上鳴には妙に刺さった。
「うっ……!なんか、すげぇ大人の余裕を感じる……!」
「実際、大人だろうが」
ドラムセットに腰掛けていた爆豪が、ぼそりと呟いた。
「何か言った?」
おもちが振り返る。
「別に」
爆豪はそっぽを向いた。