第16章 雄英文化祭編
耳郎は照れくさそうに頬を掻きながらも、先ほどまでとは違う、どこか晴れやかな表情を浮かべていた。
「ただし、やるからには本気だからね。中途半端なものにはしたくないし、みんなにもちゃんと協力してもらうから!」
「もちろん!」
「任せとけ!」
クラスメイトたちが次々に応じる。
その光景を、少し離れた場所から眺めていたおもちは、静かに微笑んでいた。
音楽を通じて、誰かと一緒に何かを作り上げる。
得意なことを持ち寄り、それぞれの力を合わせて、ひとつのステージを完成させる。
そんなクラスメイトたちの姿が、眩しく感じられた。
自分も、この輪の中にいていいのだろうか。
公安の人間としてではなく、ただのクラスメイトとして。
そんなことを考えながら、彼女は楽しそうに話す耳郎を見つめていた。
すると。
「……あっ!」
耳郎が何かを思い出したように声を上げた。
そして、まっすぐにおもちの方へ歩いてくる。
「……?」
何だろう、と首を傾げた瞬間。
ぎゅっと、手を握られた。
「……え?」
突然のことに、おもちは目を見開いた。
耳郎は彼女の手を引いたまま、真剣な表情で言った。
「おもち、うちと一緒にボーカルやって!」
「……え?」
思ってもみなかった誘いに、おもちは言葉を失った。
「私が……?」
「うん!」
耳郎は力強く頷いた。
「林間合宿のとき、バスの中でカラオケ大会したじゃん!あのときのおもちの歌声、ずっと忘れられなくて!」
その言葉を聞いた瞬間、クラスメイトたちの間に、懐かしい記憶が蘇った。
「あーっ!!あったな、そんなこと!」
上鳴が勢いよく手を叩いた。
「林間合宿の行きのバス!カラオケ大会やったじゃん!」
「そうそう!あのとき、おもちちゃんが歌ったんだよね!」
芦戸も目を輝かせる。
「めっちゃ上手かったんだよ!もう、びっくりするくらい!」
「……確かに」
瀬呂が腕を組み、当時を思い出すように頷いた。
「普段の落ち着いた雰囲気からは想像できないくらい、伸びのある歌声だったよな」
「耳心地が良かったのを覚えていますわ」
八百万も懐かしそうに微笑んだ。