第14章 気付き始めた恋心
公安委員長からの着信に、おもちは静かに応じた。
『今後の君の任務について、変更がある』
電話口から聞こえてきた声は、いつも以上に硬かった。
『雄英高校への潜入任務は継続。これまでどおり、表向きは生徒として学校生活を送りながら、裏ではヒーロー社会を脅かす組織への潜入、および情報収集を行ってもらう』
「承知しました」
『それから、神野区での一件についてだ』
彼女の指先が、わずかに止まる。
オール・フォー・ワンとの接触。
そして、彼女自身も知らなかった個性の本質。
『君の個性は、単なる空間支配能力ではない。体内に龍を宿し、その力を支配する――絶対支配。現時点では、我々もその全容を把握できていない』
「……はい」
『問題は、君自身にも制御しきれていない可能性があることだ。今後は、これまで以上に厳重な管理下に置く』
厳重な管理。
その言葉が、妙に耳に残った。
『個性抑制剤の注射ペンを常時携帯すること。異常を感じた場合は、速やかに使用できる状態を維持しろ。使用の判断についても、これまで以上に慎重を期すように』
彼女は手元に視線を落とした。
あのとき、自分の中で何が起きていたのか。
オール・フォー・ワンと対峙した瞬間、確かに何かが変わった。自分の意思とは別のところで、得体の知れない力が目を覚ましたような感覚。
あれが何だったのか、彼女自身にも分からない。
『さらに、今後はヴィランと通じている組織への隠密活動を強化する。必要に応じて、内部への潜入も行ってもらう』
「……分かりました」
『そして、脳無が出没した場合は最優先で現場へ向かい、速やかに殲滅しろ。通常のヒーローでは対処が困難なケースも想定される。君の能力が必要になる場面は、今後さらに増えるだろう』
淡々と告げられる任務。
その一つひとつが、彼女の肩に重くのしかかっていく。
雄英高校の生徒として生活しながら、ヒーローとしての活動を行い、公安の人間として敵組織に潜入する。
そのうえ、自分の中に潜む未知の力まで管理しなければならない。