第23章 満開の桜
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本当に、あっという間だった。
見る見るうちに悪化し、治療法もなかった。
先進医療を求めてご両親はを連れてアメリカへ行ったが、それきり、戻っては来なかった。
何度も何度も、会いに行きたいと懇願したのに、は僕に会うことを嫌がり、病院さえ教えてもらえなかった。
弱りきった姿を絶対に見せたくなかったという。
僕が思い出すは、元気に笑っている姿のままで記憶に残してほしかったと聞いた。
まったく、頑固者だな…───
…………
正直今となっては、君と過ごした日々が、本当に現実としてあったのか、わからなくなってきている。
との幸せな日々は、自分の夢か妄想なんじゃないかと疑ってしまう。
ウエディング写真は撮りたくないと言って、との思い出は、この指輪しか残っていない。
この指輪さえ、自分の妄想なのかも知れない。
内側に刻まれた結婚記念日とお互いのイニシャル…………
僕たちは、本当に結婚していたよな?
─
『しっかり記憶に焼き付けたから、今日の零くんの姿、忘れないよ。零くんの若かりし頃のかっこいい姿は、私が伝えてあげる。』
『ふっ。どちらにしても物証にならないじゃないか。まぁ……僕も、今日のの姿を忘れずにいるよ。』
─
二人で温泉に行った日に、そう言ってくれた。
僕といた君の姿だけは、写真に残せばよかった。
会いたい。
声を聞きたい。
抱きしめたい。
また、ふざけて笑い合いたい。
もう一度、君に…────
満開の桜のなか、
の墓に手を合わせた。
「まったく、何で僕一人で桜並木を散歩させるんだよ。
何がパートナーを見つけていいよ、だ。
思ってもいない癖に、
強がってカッコつけるなよ。」
「僕は……
結局、一人なんだな……」
ブーーー…、ブーーー…、ブーーー……
「なんだ、風見。
あぁ、わかった。すぐに向かう。」