第14章 つごもりに
「私さ、いっつも、どこかに行かなきゃ、何かしなきゃって思っていたんだ。
ここじゃだめ、もっと先に、もっと早くって。
新しい店とかオープンすると『行きたい』って言うよりは、
『行かなきゃ!』って
損すると思っていたんだよね。
なんか、どんどん時間が経つのが怖くって。
置いてかれるのが怖くって」
僕の肩に寄りかかりながら、彼女はポツポツ話す。
テレビでは、豪華な衣装のアーティストが最後の曲を熱唱していた。
ー愛は素晴らしい
そんな曲だった。
「だからさ、12月31日なんて毎年あちこち飛び歩いてたの。
もちろん、1月1日も。
友達や彼氏との予定たくさん入れてさ。
旅行行ったり、イベント参加したり。」
なーんか疲れちゃってさ
ふとつぶやく。
「でも、今は安心なんだ。
ここ!
この家、あなたの隣。
ここがあたしの居場所だって。思えるの。
すっごい嬉しいんだ。
キセキなんだ」
「キセキ・・・?」
僕はやっぱり首を傾げた。
「わっかんないかなー。
まあいいや!
とにかく。あたしと結婚したからには
来年も、次の年も、その次の年も、10年後も、20年後も、
あなたはここにいなきゃいけないの!
わかった?」
僕は笑って頷いた。
紅白が幕を閉じる。
今年は紅組が優勝したようだった。
除夜の鐘が、今年の終わりを告げる。
僕にはよくわからないキセキを噛み締めている彼女は
いつの間にか眠ってしまっていた。
年が変わる。
二人の新しい年が始まった。