【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第5章 【番外編】騒がしい休日
騒動の片付けも終わり。教団への帰り道。
私は少しだけ人の輪から離れ、静かに息を吐いた。
「……災難だったな」
すぐ隣に、ラビが並ぶ。
「本当に。まさか買い物へ出ただけで、こんなことになるなんて」
「シスコン室長のせいさ」
ラビは肩を竦めた。
私も小さく笑う。
けれど。
少し歩いたところで、ラビの表情が僅かに変わった。
「……なぁ、」
「何?」
「さっきの、ナンパしてきた奴らのこと」
いつもの軽さを、少しだけ落とした声。
「ちゃんと、追い払ったんだよな?」
「ええ。二度と近付かないよう、しっかりね」
「……そっか」
ラビは短く息を吐いた。
それから視線を逸らしたまま、ぽつりと零す。
「お前が他の奴に絡まれてるとこ想像するだけで、腹の底冷える」
思わず、彼を見る。
ラビも、ようやくこちらへ視線を戻した。
真っ直ぐな目だった。
飾りも。
軽口もない。
いつも軽く、余裕そうに見せる彼が。
今は隠しもせずに、不安を口にしている。
「心配いらないわ」
私は小さく笑った。
「下心のある人には、私、容赦しないもの」
「……知ってるさ。さっきの武勇伝、聞いたしな」
ラビが小さく笑う。
「お前に絡んだ奴が、一番可哀想かもしんねぇ」
「あら。相手に同情してるの?」
「まさか」
即答だった。
「自業自得さ」
そう言って。
ラビは、私の腰を引き寄せた。
不意の動きに、身体が彼の方へ傾く。
大きな掌が、確かめるように腰へ添えられていた。
離さないように。
「……ずっと、オレの隣にいろよ」
低い声だった。
その一言が、胸の奥へ静かに落ちていく。
私は迷わず頷いた。
「ええ」
ラビの腕へ、そっと身体を預ける。
「あなたの隣が、一番いいもの」
ラビが黙った。
見ると。
耳が、またほんの少しだけ赤くなっている。
けれど今度は。
誤魔化しも。
軽口もなかった。
ただ、腰へ回された腕に、僅かに力が込められる。
夕暮れの街並みが。
寄り添う二人の影を、長く石畳へ伸ばしていた。
散々で。
賑やかで。
けれど、どうしようもなく温かい。
そんな一日が、静かに暮れていった。
――なお。
この一件以来。
コムイさんは、私がリナリーへ近付くたび、妙な牽制をしてくるようになった。