【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第5章 【番外編】騒がしい休日
「たまには、二人でゆっくり買い物でもしましょう?」
リナリーがそう誘ってくれたのは、珍しく任務の予定が空いた朝のことだった。
「いいわね。私も、日用品を補充したかったの」
久しぶりの、穏やかな休日。
戦いも、任務もない。
ただ、友人と街を歩く。
そんな何気ない時間が、どれほど貴重なものなのかを、私はもう知っている。
私とリナリーは軽い足取りで、教団近くの街へと出た。
石畳の続く、賑やかな通り。
パン屋から漂う焼きたての香り。
花屋の店先に並ぶ、色とりどりの花。
「わぁ、見て、。あの髪飾り、可愛い」
リナリーが雑貨屋の店先を指さす。
その横顔は、任務の時に見せる凛々しいものとは違う。
年相応の少女らしい、柔らかな笑顔だった。
「本当。リナリーの黒髪に、よく似合いそう」
「も、こっちの色、絶対似合うわ」
二人で、あれこれと品物を見て回る。
他愛のない会話。
くだらないことで笑い合う時間。
それが、どうしようもなく心地よかった。
――けれど。
私はまだ気付いていなかった。
この平和な買い物が、既にとんでもない騒動の引き金になっていたことを。