【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第4章 【番外編】恋人のお弁当は、愛が硬い
任務前日の夜。
は、自室の机へ向かい、小さく唸っていた。
机の上には、一冊の本。
――『初心者でも作れる簡単お弁当』
頁を捲るたび、色鮮やかな料理の挿絵が現れる。
丸く整えられたおにぎり。
香ばしそうな唐揚げ。
綺麗に巻かれた卵焼き。
彩りに添えられた野菜。
どれも、先日自分が作り上げた、あの緑色の何かとは似ても似つかなかった。
「……難しそうね」
は真剣な顔で、挿絵を見つめる。
先日の料理は、失敗だった。
皆の身体に良いものを作りたいと思った結果、鍋いっぱいの香草を入れてしまい、ラビを医務室送りにしてしまった。
もっとも、ラビ本人は最後まで「美味かった」と言い張っていたけれど。
あの青白い顔を思い出すと、さすがにその言葉をそのまま信じることはできなかった。
「……次は、ちゃんと作らないと」
小さく呟き、頁を捲る。
その時だった。
昼間、リナリーが何気なく口にしていた言葉が、ふと脳裏へ蘇った。
『好きな人にお弁当を作るのって、すごく恋人っぽいと思う』
恋人っぽいこと。
の指が、頁の端で止まる。
ラビと恋人になってから、少し経った。
手を繋ぐようになった。
触れられる距離も、以前よりずっと近くなった。
からかわれる度、以前より胸が落ち着かなくなるようにもなった。
けれど。
“恋人らしいこと”と言われると、まだよく分からない。
ラビはいつも、真っ直ぐに好意を言葉にしてくれる。
綺麗だとか、可愛いだとか。
好きだとか。
その度に困ってしまうけれど、本当は少しだけ嬉しい。
なら、自分も。
何か、ラビが喜んでくれることをしてみたい。
は、改めて本へ視線を落とした。