• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第27章 【幕間】神田/月影の楽園 前編


痛みを知らないわけではない。
失うことを恐れていないわけでもない。

それでも、ティファは生きている側へ人を引き戻そうとした。


まるで、傷付いても立ち上がることだけは諦めないとでも言うように。


「……チッ」

神田は苛立ったように包帯を引き千切り、腕へ巻こうとする。

だが、不意に背後から足音が聞こえた。


「神田?」

その声に、手が止まる。


振り返ると、廊下の入口にティファが立っていた。


黒い団服姿。
片手には、任務報告書らしい紙の束を抱えている。

長い銀髪が、窓から差し込む淡い光を受けて静かに揺れていた。


神田は即座に顔をしかめる。

「……何だ」

「それ、こっちの台詞よ。こんなところで何してるの?」

「見りゃ分かんだろ」
「分からないから聞いてるの」


相変わらず、引かない。


神田は苛立ったように視線を逸らし、再び腕へ包帯を巻こうとした。

だが、その血の滲んだ腕を見た瞬間、ティファの表情が僅かに変わった。


「……まだ血が滲んでるじゃない」
「大したことねぇ」

「大したことないかどうかは、傷を見てから決めるわ」

「……手前の限界も隠す奴が、よく言う」

低く返すと、ティファが一瞬だけ目を丸くした。


それから、困ったみたいに小さく笑う。


「……それは、否定出来ないかも」

/ 1033ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp