第23章 【第二十二話】もう戻れない夜
私は笑みを零しながら部屋へ入り、静かに扉を閉めた。
扉へ背中を預けた瞬間、深い吐息が零れる。
まだ、唇に熱が残っている。
額に触れた優しい口付けも。
抱き締められた腕の強さも。
低く囁かれた、好きという言葉も。
全部が、夢みたいなのに。
夢ではなかった。
「……ラビ」
名前を呼び、そっと唇へ指先を触れた。
そこには、確かに彼の熱が残っていた。
怖くないわけじゃない。
これから先、きっと迷うこともある。
私を想うことが、ラビを苦しめる日も来るのかもしれない。
私もまた、彼を失う怖さに心を乱される日が来るのだろう。
それでも。
私はもう、自分の気持ちから逃げたくなかった。
「……ラビの隣に、いたい」
小さな呟きが、静かな部屋へそっと溶けていく。
窓の外では、雪がまだ降り続いていた。
白く、静かに。
まるで、今夜交わした想いを、誰にも知られないように包み込むみたいに。
私は熱くなった頬を両手で押さえ、小さく笑った。