第23章 【第二十二話】もう戻れない夜
ラビの胸へ額を預けたまま、私は目を閉じていた。
「……離れると、実感なくなっちまいそう」
頭上から、掠れた声が落ちた。
私が顔を上げると、ラビは眉を下げて笑う。
「今、まだ半分くらい夢見てる気分なんさ」
私も同じだった。
けれど、触れている体温だけが、これは現実なのだと教えてくれる。
その時だった。
――ゴォン……。
重たい鐘の音が、静かな夜へ響き渡る。
私ははっと肩を揺らした。
深夜を告げる鐘。
高い天井へ反響した音が、甘く溶け掛けていた空気を少しだけ現実へ引き戻す。
ラビが小さく息を吐く。
「……タイミング悪ぃ」
けれど、その腕はまだ私を離さない。
私は思わず小さく笑ってしまう。
するとラビが、じっと私を見下ろした。
「……可愛過ぎて困る」
ラビは私の髪へ指を通した。
「このまま本気で攫っちまうぞ」
思わず固まると、ラビが喉の奥で笑う。
「――うそうそ」
「……本当に?」
「半分くらいは」
ラビはあっさり言った。