第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
何両か先へ進んだところで。
「ぬおおおぉぉぉぉぉ!! 吾輩の服がぁぁぁ!!」
情けない悲鳴が車両へ響き渡る。
三人で慌てて扉を開けると――そこには、パンツ一丁で床へ転がるクロウリーの姿があった。
「……」
「……」
「……クロちゃん、何してんの?」
ラビが真顔で聞いた。
クロウリーは涙目でこちらへ縋り付く。
「き、聞いてほしいのである!! この者達が、ちょっとした遊びだと言うので……!」
視線の先。
テーブル席では、三人の男達がニヤニヤ笑っていた。
その中心にいたのは、瓶底眼鏡に緩いパーマ頭の男。
彼はクロウリーのトランクを片手でひらひら振りながら、気の抜けた笑みを浮かべている。
「いやぁ、旦那が弱すぎるんスよ。ちょーっとポーカーしただけなのに」
間延びした口調。
どこか気怠げな笑い方。
私はなんとなく、その男を見た。
すると、男の視線がゆっくりこちらへ向く。
ほんの一瞬だけその口元が、妙に愉しそうに細められた。
喉の奥で『ニルヴァーナ』が小さく脈打つ。
理由は分からない。
けれど、本能が微かに警鐘を鳴らしていた。
「返してください」
アレンが静かに前へ出る。
「クロウリーの荷物です」