第52章 【第四十七話】欲しかった言葉
神田が、少しだけこちらを見る。
「聞いて、素直に話すのかよ」
「……」
「話す気ねぇだろ」
「……そういうことじゃない」
「じゃあ何だ」
答えようとしたけれど、言葉が出なかった。
どうして聞いてほしかったのか、聞かれたら本当に話したのか、自分でも分からなかった。
「……分からない」
神田が深く息を吐いた。
「……面倒くせぇやつ」
それきり、神田はまた素振りへ戻った。
私は膝の上で、自分の手を開いた。
さっきまで、この手は何度も力を呼んでいた。早く形になれ、と急かすみたいに。
――私はエクソシストなのよ。
あの時叫んだ言葉が、また胸に戻ってくる。
守りたい人がいる。助けを求める声を、聞こえなかったことにはしたくない。
だから戦ってきた。その気持ちは今も変わらない。
今ここには、敵も、助けを求める誰かもいない。何も残っていない掌を見ていると、また喉へ手を当てたくなる。
力に呑まれて、自分の心まで消えてしまいそうになった時の怖さは、まだ覚えている。
力が応えてくれない今も、同じくらい怖かった。
……どうして。
膝の上の指が、いつの間にか、また握り込まれていた。
不意に、風を切る音が止んだ。
「……神田」
「あ?」
聞くつもりはなかったのに、口が勝手に動いた。
「……神田は、何のために戦ってるの?」
「何だ、急に」
「いいから」
神田は少しだけ眉を寄せた。
「俺がそう決めたからだ」
「それ……答えになってる?」
「なってんだろ」
あまりにも迷いがなくて、しばらく何も言えなかった。
「……そう」
それだけ返し、目を逸らした。
仲間のため、とか。使命だから、とか。
そんな答えは返ってこなかった。