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彼女はボクに発情しない

第10章 恋する乙女のための小夜曲


☆☆☆
「陽太のバカ・・・」

もう何度目かわからないほど繰り返した言葉は、そのまま夜の闇に溶けて消えた。
自分の部屋、ベッドの中。私はぼんやりと天井を仰ぎ見ていた。

私が試合に負けたせいで、明後日には陽太と笹本さんはデートすることになってしまった。大槻さんや笹本さんと楽しそうにデートの計画を立てる陽太を見ていられなくて、私はあらぬ方向を見ていた。

ただ、耳だけはどうしても陽太たちの声を拾ってしまう。明後日、駅近くのショッピングモールでウィンドウショッピングを楽しんだ後、カジュアルなカフェでランチ。そのあとは、映画を見に行って、最後に花火大会に行く・・・

って、そんなデート、私だって陽太としたことがない。

「陽太のバカ・・・本当にバカ」

やっぱり、陽太は笹本さんのようなおっとりした女子力の高そうな子が好きなんだろうか?

帰り道、ややもすると陽太に「笹本さんとのデートに行かないで」と言ってしまいそうだった。それをこらえるのに必死だったし、彼の顔を見たら涙が出そうだったから、陽太の方を見ることすらできなかった。

涙・・・。

勝負に負けた悔し涙?
それとも、恐怖?
陽太を失ったらどうしようという不安だろうか?

ううん。わかってる。嫉妬だ。

上を向いてないとこぼれてきそうだった。

陽太が話しかけてこなかったのが救いだった。こんな顔、見られたくない。
真っ直ぐに陽太に好きだとアプローチできる笹本さんにやきもちを焼いている、醜い私。

ころん、と寝返りを打つ。誰もいない部屋。静かな夜。
真っ白い壁だけが目の前にある。
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