第9章 ボクと歌姫たちの三重奏
そんな歌。私がいつも感じてることだった。曲を聞いたとき、とても気に入った。
無意識に陽太を見つめて歌ってしまう。
ああ・・・変なふうに表情に出ていないといいけど・・・。
「ただ、この夜に、あなたを思い続けるだけ・・・」
切ない余韻を残して歌が終わる。意外なことに大槻さんと笹本さんが大きな拍手をしてくれた。
「すっごーい!歌上手い!」
「ちゃん、声が通るね〜」
いつの間にか、「さん」から「ちゃん」と呼ばれるようになっていた。
私の得点は98点だった。暫定1位だ。
「あ、次の曲、これ誰?」
流れてくるイントロ。画面に映るタイトル。
「ボクだ」と、陽太がすっくと立ち上がる。マイクを構え、足でリズムをとる。また、形から入ってからに・・・。
ああ、この歌なら知っている。みんなに愛されるすごく綺麗で可愛い高嶺の花を凡人の男の子が追いかけて、追いかけて・・・という曲だ。
男の子の片想いソング。
♪妄想の中で会いたいと願っても、君はもっと美形の誰かと一緒にいるに違いない
奇跡が起きて、僕のことを好きになりゃしないか
そんな歌詞。
陽太は誰かのことを思って歌っているのかな?いや、きっとあまり考えていないのだろう。でも、もし、こんなふうに陽太に思ってもらえるのが、この願いの対象が、私だったらいいのに、とふと考えてしまう。
彼が歌う様子を目を細めて見つめてしまう。
「♪そんな願いをしたところで、僕のものにはなるワケがない〜」
ねえ、あなたのその想い人は誰なの?風香ちゃんが言うように本当に私?
でも、それこそ、『そんなわけないか』と思ってしまう自分がいる。
陽太の点数は意外にも89点だった。高音部で声が裏返ったせいかもしれないが、まあまあじゃないか。
次の曲のイントロが流れる。
「あ!私だ」
笹本さんが立ってマイクを持つ。
流れてきたのは、彼女の雰囲気によく似合う優しい旋律の歌だった。
♪悲しいときや、勇気が出ないときには、帰るところがあるのを思い出して
きっとあなたを見ている人がいるはずだから
どんな人も、生きていてひとりきりなんてことはない
みんなみんな大きな生命に繋がっている