第9章 ボクと歌姫たちの三重奏
☆☆☆
「♪きみ〜だけを〜♪」
微妙に調子外れなまま、余韻を残しつつ、霧島くんが歌い終わった。採点画面に移り、ドラムロールとともに、得点が表示される。
72点
あの感じでもそれくらいの得点か・・・。カラオケの採点機能は、リズムと声量に反応しているというのを聞いたことがある。とにかくリズムよく大きな声を出すことが大事なようだ。
次の曲は大槻さんが入れたものだった。アップテンポの韓国系アイドルユニットの有名曲だ。
♪あなたを幸せにしたい、
あたしを手に入れられなきゃ、あんたの人生大失敗よ
だから、ちゃんと手を取って
離さないでいなきゃだめよ
といった内容の歌詞。上から目線のツンデレな曲だ。なんとなく彼女の性格というか、キャラによく合っている。
歌いだしもスムーズ、音程も取れているし、声もいい。
霧島くんには悪いけど、なんとなく口直し、いや、耳直しと言ったところだ。
当の霧島くんはといえば、『鼻の下が伸びている』というのはこういう顔をいうのだろう、というようなラブ100%の顔で大槻さんを見つめている。
うーん、好きな人を見つめてる時って、こんなふうに分かりやすいものなんだ・・・。私も気をつけなくては。
ちらっと陽太を見る。陽太が私を見る目は・・・?
ダメだ・・・わかんないや。人のことはよく分かるのに、自分に関することだとからっきしだ。
笹本さんも大槻さんの歌声に合わせて手拍子を打っている。その姿を見て、またメラッとくる。
負けないんだから!
そうこうしているうちに、大槻さんが歌い終わる。
得点は93点だ。かなりの高得点なのではないだろうか。
次に流れだした曲は、少し古めのバラードチックな曲だった。私が入れたものだ。
主人公の女性の想いに気づかない男性に向けた片思いを歌った歌。
歌詞が切なく流れる。
♪楽しそうなあなたをただ見ることしかできない
自分とは違う世界のあなたを想う
好きだという、あたなにも、誰にも言えない言葉
たとえ私がどんなにあなたを想っても
あなたにこの言葉は伝えられない
♪この気持ちは秘密
胸にしまっておかなければいけない秘密
あなたに知られないように
私は強がって
わざと離れていくの
それが現実、それがこの世界の約束