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彼女はボクに発情しない

第8章 北風と太陽による諧謔曲


☆☆☆
結局、今日は、一人で家に帰った。
いつもそうじゃないのかって?いや、そうなんだけど、いつもは、帰り道、さり気なくを視界に入れながら帰るのがボクの日常だ。
いつ、『発情』があってもいいように、近くにいるに越したことはないから。

じゃあ、並んで変えればいいじゃん、って?
そうしたいのは山々だが、ほどの美人になると、並んで歩いているだけで噂になってしまう。いちいち否定するのも面倒なので、高校1年生、早々に並んで帰るのはやめた。そのかわり、偶然を装ってチラチラ視界に捉えつつ帰るようになったというわけだ。

色々言っているが、まあ、傍から見たら、ボクは単なる美人の幼馴染を追いかけ回すストーカーである。

否定はしないけどさ。好きだし。実際。

もボクがそうしているのを分かってるはずなので、あんなふうにボクを振り切ることはこれまで一度もなかった。なのに・・・。いったい、なぜ!?

家族で囲む夕食の席、食べながらではあるが、ボクの頭は昼間ののことでいっぱいだった。ぼんやりと箸を進める。

もしかして、は怒ってるのか?
あまりにも出来が悪いから・・・。

『もう、ほんっと!陽太のバカにはほとほと呆れたわ!』
頭の中のが腕を組んでぷいとそっぽを向く。
『そもそも、勉強なんて、自分でやんなさいよね!いつまでも赤点ばっか取ってんじゃないわよ!』
言い残して、は明るい方に歩き出す。ボクは常闇に一人取り残され、ガックリ膝をついて、ひたすらに歩き去るに手を伸ばす。

ああ・・・、・・・そんな・・・ボクを見放さないでぇ・・・

「もう、陽!それアタシのはんぺんだよ!何枚食べるつもりよ!!」
風香に言われはたと気づく。
しまった、空想に夢中で風香の皿からはんぺんの挟み揚げを取ってしまっていた。
いかんいかん・・・現実から頭が遊離している。
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