第5章 Lesson4 憎めないヤツ
「君の『本当の家』は、ウィルトシャー州にある僕の屋敷だろう?」
ああ、やっぱりと言うかなんと言うか……。レイが呆れている間にも、ドラコはアレクセイを真っ直ぐに見据えていた。
その顔には、明らかに有無を言わせぬ圧がある。アレクセイが目を瞬く。
「どうしたの、ドラコ?」
「いや、今はちょっとした『手違い』でロンドンで暮らしているが、本来なら僕の家で暮らしているはずなんだ。なにせレイは僕の婚約者だからね。卒業したら式もあげる予定さ」
それを聞いたアレクセイは目を丸くした。そして次の瞬間、その顔がパア―っと明るくなる。
「恋人同士なのは知っていたけど、婚約までしていたんだ!」
ドラコが自慢げに「まあな」答えると、アレクセイはますます嬉しそうな顔をした。だが、レイとしては思い出したくない現実を突きつけられた気分がして、寝不足で重い頭が余計に重くなったように感じた。
「ドラコ、お前はまた余計なことを……」
「なんで!?素敵じゃないか!」
まるで自分のことのように、アレクセイは楽しそうに笑った。
「幼馴染なんだろう? それで恋人になって、婚約までしてるなんて!」
アレクセイはまだ何か聞きたそうにしていたが、その時、次の授業を告げる鐘が、大聖堂中に響き渡った。それと同時に、生徒たちは一斉に荷物をかき集め、各々の授業に向かう。
レイも最後の一口まで紅茶を堪能すると、1限目の授業の為に席を立った。と同時に、アレクセイがレイへ向かって笑顔で手を振った。
「レイ、天文学楽しみにしてるよ!」
そう言って、アレクセイは嬉しそうに自分の荷物を抱えた。その顔には、先ほど知ったばかりの新しい事実への純粋な興味と喜びが浮かんでいる。レイはそんな彼を見送りながら、少しだけ笑った。
――本当に、憎めないヤツだ。
そう思いながら、レイも仲間たちとともに大聖堂を後にした。