第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
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「呼べ、!! 俺の名前を――!!」
恵くん、今、なんて……?
だめ。
そんなこと、できないよ!
だって、名前を呼んだら。
あの約束を破ったら、今度こそ姑獲鳥は恵くんを――。
『十年間、お前が俺を守ってくれたんだろ!?』
……どうして?
恵くん、知ってたの?
私が声を出さなかった理由。
ずっと、恵くんを守りたかったこと。
昨日、初めて恵くんの名前を呼んだ。
あの時は、どうしても離れてほしくなくて。
沙耶香ちゃんに取られるのが怖くて、恵くんを危険にさらすと分かっていながら、声を出してしまった。
でも、今は違う。
姑獲鳥がすぐそこにいる。
ここで名前を呼べば、結界の向こうにいる恵くんが私のいちばん大切な人だって、確実に知られてしまう。
怖い。
恵くんが死んじゃったら、どうしよう。
私のせいで、もう二度と会えなくなってしまったら。
そんなの、耐えられないよ……!
「!!」
「…………っ」
恵くん……。
いつだって、そうだった。
私がうまく気持ちを伝えられなくても、恵くんはちゃんと分かってくれた。
小さい頃、暗い押し入れの中で震えていた時も。
声を出して助けを呼ぶことすらできなかった私を、恵くんは見つけてくれた。
今だって、そう。
この布の向こうに私がいると信じて、何度も名前を呼んでくれている。
会いたい。
もう一度、顔が見たい。
恵くんに、抱きしめてほしい。
それに、まだ。
ちゃんと伝えられていないことが、たくさんある。
……だから、今度は私が恵くんを信じる番なんだ。
ゆっくりと息を吸い込んだ。
十年間、閉じ込めてきた声。
昨日は、失いたくなくて呼んだ名前。
今日は、自分の意思で恵くんに届けたい。
恵くん、信じるよ。
神様。
どうか、お願い。
恵くんを奪わないで。
「……め、ぐ……っ」
最初は、かすれた音しか出なかった。
それでも、お腹に力を入れて声を振り絞る。