第8章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない Ⅱ**
ばしゃっ。
「……え?」
浴室から水音がした。
振り返ると、さっきまで隣にいたはずの朔がいない。
「朔?」
浴室を覗くと、そこには濡れた羽をぶるぶると振って、早くしろと言わんばかりに朔がこちらを見ていた。
『きゅぅ!』
「そうだね。まずはシャワーだね」
今はとにかく、この臭いと汚れをどうにかしよう。
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リビングへ入ると、先生はソファに座ってスマホをいじっていた。
「先生、シャワーありがとうございました」
私の声に顔を上げた先生の視線が、一瞬だけ止まる。
「…………」
「……何ですか」
「いや……」
先生はソファの背もたれに身体を預けたまま、まだこっちを見ている。
そんなに見ないでほしい。
下着まで全部濡れてしまったから、実はブラもパンツも何も穿いていない。
借りたTシャツは、私が着ると裾が太腿の辺りまでくるくらい大きいんだけど。
さっきから、ものすごく落ち着かない。
歩くだけで裾の内側に空気が入ってきて、すーすーする。
なんか、私こういう状況多くない?
「まあ、そうなるよね」
どういう意味?
まさか。
何も穿いてないの、バレてないよね?
急に心配になって、Tシャツの裾をそっと引っ張った。
「朔は?」
「朔はもう戻しました。綺麗になったし」
「そ。の制服も今洗ってるから。乾燥機かければ、すぐ乾くよ」
「ありがとうございます……何から何まで」
「別に。その格好で高専帰すわけにもいかないしね」
ソファの横まで来たものの、そこで立ち止まってしまった。
座りたいけど。
先生の隣、座っていいのかな。
旅館でのあの夜以来、先生と二人きりになると何を話していいかわからなくなる。
頭の中でぐるぐると考えていると、先生が自分の隣のスペースをぽんぽんと叩く。
「そんなとこで突っ立ってないで、座ったら?」
「あ、じゃあ……」
先生から少し離れて、ソファの端っこへ浅く腰を下ろした。