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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第8章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない Ⅱ**


「うわ。、それ以上近づかないで」



任務を終えて下水道から地上へ出た途端、先生に言われた最初の言葉がそれだった。


ひどい。
好きな人に「近づかないで」なんて言われたら、普通に傷つく。
傷つくけど……。


私は自分の袖口を鼻へ近づけてみた。



「…………くさい」



うん。
これは、近づかないでって言われても仕方ない。

下水道での任務中、呪霊の攻撃を避けた拍子に足を滑らせて水路へ突っ込んだ。


髪は濡れてる。
制服も汚れてる。
靴の中なんて、さっきから歩くたびに気持ち悪い。


隣では、人ひとりを乗せられるほど大きな黒い鳥の式神・朔(さく)が、しょんぼりと羽を下げていた。

朔も私を庇って、下水まみれになっている。
尾羽の先からも水滴が落ちて、足元に水たまりを作っていた。



「……ごめんね、朔」

『きゅぅ……』



声をかけると、朔は弱々しく鳴いた。



「朔もかわいそ。主人がドジだと、式神も苦労するねぇ」

「…………」

『…………』

「まあ、僕は術式あるから関係ないけど」



先生は笑いながら、自分の制服の袖を軽く払った。

先生も下水道にいたはずなのに、汚れひとつない。
髪も服も、任務前とほとんど変わっていない。

……ずるい。
というか、先生がもうちょっと手伝ってくれてたら、こんなことにならなかったと思うんだけど。


もういい。
それより早く帰ってシャワー浴びたい。
今すぐ全部脱いで、頭からお湯をかぶりたい。


補助監督さんにお迎えをお願いするにしても、この状態で車に乗ったら絶対に汚す。

朔に乗って帰ろうにも。



「朔、飛べそう?」

『…………』



朔は濡れた翼を一度広げかけて、すぐに力なく下ろした。

無理……だね。



「電車……」

「それはやめた方がいいんじゃない?」

「……ですよね」



こんな格好で電車に乗ったら、たぶん一両分くらい人が離れていく。
というか、その前に私が耐えられない。

帰れない。
どうしよう。
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