第37章 ゴーストアプリ
T子は洞の前にある少し大きめの石の上に火をつけたろうそくを供える。よく見ると、その石にはベッタリと白いろうがこびりついていた。それは以前、昼間に来たT子が供えたものなのだろう。
T子が火のついたろうそくを前に熱心に祈る。その姿を見て、先程までは不気味に思っていたL子だったが、来てよかったかもしれないとちょっとだけ思い始めていた。アプリが本当かどうかは別として、これでT子の気が晴れるなら、ひとつの方法かもしれない、と。
T子は熱心に祈り続ける。
1分経ち、3分経ち、次第にL子は不安になってきた。
少し長過ぎないか?
5分以上経ったとき、さすがにおかしいと思い始めた。
「ねえ、T子」L子が声をかける。
そのとき、T子がブツブツなにか言っていることにやっとL子は気づいた。
耳を澄ますと
「くらい、くらい、あな、あな、あかり、ちち、くらい、N、やま・・・」
まるで念仏のように抑揚のない声でつぶやいている。ぞっとして、L子はT子の肩を揺すった。
「ちょっと、T子、どうしたの!」
すると、ブツブツ言っていたT子はふらりと立ち上がり、
「呼んでる・・・」
とポツリと言うと、そのままL子を振り切って風穴に入ろうとする。
驚いて必死に止めようとするのだが、T子の力はものすごい。L子を引きずらんばかりの勢いだった。
「くらい、あな、ちち、N・・・からだ、からだ・・・」
「ちょっと、T子!何しているの!?」
L子は叫んだ。そしてついに、渾身の力を込めてT子の身体を引き倒し、頬を一発、ピシャリと張った。
幸運なことにT子はそれで正気に戻ったようだった。
キョロキョロとあたりを見回して、目を丸くしていた。
「行くよ!」
今度はL子がT子を引っ張るようにして山道を下る。麓に着いてからは、ふたりともほぼ全力疾走で街まで走って帰った。