第10章 彼は彼女を取り戻したい 【ONE PIECE ロー】
薄暗い倉庫の中、鼻を突くのは潮の香り、そしてーー濃厚な精液の匂いだった。
「アイアイ……! キャプテン、大変! 倉庫に女の子が倒れてる……!」
ベポの狼狽した声が潜水艦に響き渡る。
駆けつけたローは、ハッチの隙間から漏れる光の下に転がっているそれを見て、思わず眉をひそめた。
「……チッ、なんだこれは」
そこには、ボロ布のようになった服をはだけさせ、白濁した液体を太ももに滴らせたまま気を失っている女がいた。
肌には赤黒い指の跡がいくつも残り、直前までいかに凄惨な「行為」が行われていたかを物語っている。
ローの鋭い眼光が、背後に控える部下たちを射抜いた。
「おい……。お前らの中に、この女に手を出した奴はいるか」
「ま、まさか! ずっと航海中だったし、こんな子見たこともないですよ!」
怯える部下たちの反応に、ローは短く息を吐く。
嘘を言っているようには見えない。
となれば、能力者による密航か、あるいは「何か」が起きてここに現れたのか。
「……どけ。死なれたら寝覚めが悪い」
ローは刀をベポに預け、女の傍らに膝をついた。
「……っ……ぁ……」
微かな呻き声とともに、いのりはゆっくりと瞼を持ち上げた。
視界に飛び込んできたのは、天井の配管と、見たこともない奇妙な帽子を被った男の顔。
(直哉……さん…? いえ、違う。ここは、どこ……?)
恐怖で身体を強張らせた彼女に、ローは感情の読めない低い声を投げかける。
「おい、気がついたか。お前、名前は」
「……禪院、いのり……。あ……いやっ、触らないで……!」
ローの指が傷ついた肩に触れようとした瞬間、いのりはガタガタと震えながら後退りした。
その瞳には、絶望と、男性に対する根深い恐怖が張り付いている。
「安心しろ。……お前を組み伏せる趣味はねェ。俺はトラファルガー・ロー。医者だ」
ローは乱暴ながらも、手近にあった清潔な毛布を彼女の肌に放り投げた。
「酷い有様だな。……中までズタズタか?」
「…………」
いのりは、股の間を伝う不快な熱と、直哉に刻まれた屈辱を思い出し、顔を伏せて震えることしかできない。