第6章 盲亀の浮木
あれから悟さんは帰って来なくて、1ヶ月以上過ぎた。
恋しくて恋しくて…胸が張り裂けそう。
連絡もぱたりと止んだ。
昨日、渋谷で何かがあった。
十中八九、悟さんが絡んでいることは、私でもわかっていた。
学校の校門を出ると、黒塗りの乗用車が止まっている。
その前には眼鏡をかけた男性。
その男性は、真っ直ぐ私の方に来た。
「十六夜葉月さんですか?
伊地知潔高と申します。
五条さんのことでお伝えしたいことがあるので、少しお時間よろしいでしょうか」
信用していいのかはわからない。
でも、悟さんの名前を出されては、頷くことしか出来なかった。
翠に大丈夫なのかと声をかけられたが、ここでこの人に…伊地知さんについて行かないといけない気がした。
エスコートされ車に乗り、どこかに向かって走り出す。
「どうか、お心を乱さず聞いてください。
五条悟が――封印されました。
封印を解く方法は今のところ、まだわかりません」
一瞬、心臓が止まり、今度はバクバクと動き出す。
握った拳が湿り、背中を嫌な汗が伝った。
「前々から五条さんに言われていたことがあります。
十六夜さんをこのまま十六夜家へ護送します。
五条さんが戻るまで、ご実家で羽を休まれてください」
反対することなんて出来なかった。
愛しい人がそうしろと言っている。
「わかりました。
お願いします」
淡々と粛々に…五条悟の妻は強くあらないと。
そう虚勢を張っていないと、今にも不安に押し潰されそうだった。