第1章 第一話
「――終わらない物語を歌おう」
太陽の王は白き神殿に座し、
月の一族はその傍らに在った。
王は笑い、
世界は燃えた。
大国の影に、
オーギュスタンあり。
――『灼熱の系譜』
太古の昔より広がる砂漠の地に、歴史上、もっとも巨大な帝国が存在した。
その力を最大にしたのが、アブシール朝、ラガシュ一世の時代である。
残忍、非道。数々の悪名が各地に残る中でも、彼を称賛する者は多い。
そして今日は、彼の輝かしい歴史の中の、影の英雄の話をしよう。
この物語の主人公は、アブシールの英雄、ユリウス・オーギュスタン将軍である。真っ黒な鎧に真っ黒な兜、フルーレという剣を持った細身の将軍。
この時代、アブシール朝と双璧を成した、メディシス王国。
彼は、そのメディシス国建国以来400年支える重鎮、名家オーギュスタンの嫡男でもあった。
メディシスとアブシールによる、アデレータ海戦は有名だが、若きユリウスもメディシス側で参戦していた。
しかし、メディシスは歴史的大敗を喫する。
海上で、共に参戦していた親類ソルト・オーギュスタンと捕らえられ、二人の身柄はアブシールへと移された。