第42章 開く扉
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「お姉ちゃん、帰ってくるなんて珍しいね」
咲希が言う。咲希はまだ高校2年生だ。結構部活が厳しいらしく、今日も練習に出ていたという。
「う・・・うん・・・たまには帰ろうかなって」
「ふーん」
私、咲希、母の3人で食卓を囲む。今日のお夕飯はふわっとした溶き卵の入った青梗菜とトマトの中華炒め、冷奴、ホッケの塩焼き、それからアサリの味噌汁だった。いつもながら母の食卓には統一感がない。
「おねーちゃん、醤油取って」
咲希は食欲旺盛だ。反面、私はなんとなく喉にまだものがつかえているようでスッキリしない。
うーん・・・あの子は誰なんだろう?
もしかして、私が何かを言った、あの子が『ユミ』なんだろうか?
夢の中の日記にも『この日初めて裕美に会った』みたいなことが書いてあったし。
「ねえ、お母さん」
「何?裕美ちゃん」
「私にさ、ユミ、って友達いたっけ?」
「ユミ、ユミ・・・ユミちゃん?いたっけ?咲希ちゃん、覚えている?」
咲希も首を振る。
「変な話するようだけど・・・その・・・転校するときに別れがたかった友達っていうのが、ユミっていう子だった・・・なんてことはない?」
「うーん・・・覚えてないわね」
「え!お姉ちゃん、小学校転校、嫌だったの?!」
咲希がびっくりしたように声を上げる。
「え・・・うん・・・そう・・・だったみたい」
「うっそだー!」
「なんで?」
「だって、お姉ちゃん、早く転校したいって、パパに言ってたじゃん。私、それ見て、小学校って怖いとこなんだーってガクブルしてたんだよ?」
え?どういうこと?
母は、友達と別れがたかったのか、毎日泣きながら帰ってきたと言う。
妹は、早く転校したいって言っている私を見ている。
いったい、どっちが正しいのだろうか?
「だって、咲希ちゃん、裕美ちゃん、毎日学校から泣きながら帰ってきてたじゃないの」
「そうよ、あれっていじめられてたんだもん。ね?お姉ちゃん?」
いじめって・・・
「あらやだ、私全然知らなかったわ。お父さんには言ったの?」
私は首を振る。というか覚えていない。
「お姉ちゃん、学校でからかわれたって、それで泣いてたんだよ。私、よく覚えているよ」