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天狐あやかし秘譚

第126章 形勢逆転(けいせいぎゃくてん)


運転手の声を聞いて、一瞬、明咲は足を止めるが、すぐに九条の方を振り返ると、タクシーに向かって『取っておいてください!』と言い捨て、走り出した。

九条の目はマンションの上空を舞う白鷺姫に注がれている。

「九条様!」
「明咲ちゃん・・・まずい、やっぱりもう来てるみたいだ!君はここで・・・」

そこまで言いかけた時、ドゴン!と大きな音がした。二人は顔を見合わせる。

「来てるのは怪異だけじゃないみたいだ。明咲ちゃんはここで待機して警察を呼んで。」
「九条様は!?」
「大丈夫・・・止めてみせる」

そう言い残すと九条はマンションの階段に飛び込んでいった。エレベーターはあるはずなのだが、走ったほうが早いと踏んだようだった。

「九条様!」
明咲も追いすがろうとするが、九条の命令を無視するわけにもいかない。とりあえず自分の持っているスマホで警察に110番通報をすると、念の為、経過報告として陰陽寮にも電話をかけた。これで、一応彼女はその役を十分に果たしたことになる。

待機と言われたけど・・・

しかし、その心中は穏やかではなかった。九条があれほど慌てなければいけないのは自分の責任だ・・・そう思っていたからだ。結局、少し逡巡した明咲は、腰につけていたポーチから鏢を取り出していた。
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