第126章 形勢逆転(けいせいぎゃくてん)
規則に則り沢口が厳重に注意する。しかし、黒咲は何か焦ったような必死の形相でガタガタと鉄格子を揺すってくる。
何だ?何だ?
その表情に若干の恐怖を感じたものの、努めて冷静さを装い、沢口は黒咲が入ってる房に近づいていった。
「静かにしてください。それとも何か要求があるのですか?」
そんな沢口を黒咲が見つめ返す。手入れの行き届いていない髪の毛がバサリと顔に掛かっており、その隙間からギロリと覗いてくる。その視線に沢口はゾクリと薄ら寒いものを感じた。
沢口が恐怖を振り払うべく、もう一度注意をしようと口を開きかけたとき、ボソリと黒咲が声を発した。
「刑事さんを呼んでください。大事なことを思い出しましたから・・・」
不思議なことに、その声があまりにも『普通』だったことに、沢口はさらなる恐怖を感じ、ゴクリと息を呑んだのであった。