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天狐あやかし秘譚

第126章 形勢逆転(けいせいぎゃくてん)


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【形勢逆転】戦いや勝負、立場において、不利な状況から一気に逆転し、優勢に転じること。
こっから一気に巻き返すわよ!みたいな。
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【都内某所警察署】

ブツブツブツブツ
  ブツブツブツブツ・・・

留置場の真っ白な壁に向かってボサボサの黒髪の女が何事かを呟いている。指で壁に何事か文字のような、記号のようなものを書いているように見えた。

その様子を監視台から見ていた沢口美恵子巡査は留置場勤務をして1年半が経つ。若いながらもそれなりにキャリアを積んでおり、これまで様々な留置人を見てきたが、あれほど不気味な人は見たことがなかった。

黒咲紗倉

先日、ストーカー規制法違反他、多くの嫌疑をかけられ逮捕されてきた容疑者である。

この女性、留置当初から異彩を放っていた。
なので、最初は3人部屋に留置していたが、他の留置人から苦情があったことから現在はひとり部屋に隔離している状況である。当初は自殺の危険も示唆されたので厳戒態勢で臨んでいたが、彼女の異常性はそういったレベルではないことがすぐに分かった。

精神病も疑われたが、簡易鑑定の結果は『至って正常』だったという。

頻繁に『手紙』を届けたいと要求してきたが、その送付対象が、まさにストーキングをしていた人物だったので、当然許可は下りなかった。それが分かると今度は弁護士との接見を求めてくる。その理由も自身の罪状軽減のための相談などではなく、ただひたすらにストーカー対象へメッセージを届けてほしいと求めていたようであった。

偏執的・・・という言葉が最もふさわしい人物だ。
そんな風に沢口は思っていた。

「あ・・・」

他の房に沢口が目をやった時、黒咲が少し大きめの声を上げた。何事かと彼女が目をやると、ガンと音を立て、やおら黒咲が鉄格子にしがみついてきた。

「無用な音を立てないでください」
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