第6章 お料理ネコ
〜The cat waiting for special dish〜
自慢じゃないが、俺は休日の過ごし方が下手だ。
特に趣味もないし、友人も多い方ではない。結婚していたときは、家族で出かけることもあったが、離婚してからというもの休日は平日にできない家事をする以外、ほぼ何もしていない。
音子が来てからというもの炊事、洗濯、掃除と音子がこなしてくれているので、休日は本当に何もすることがない。なので、大抵、休日は寝坊する。
ぴぴぴぴ・・・9時45分に目覚ましがセットされている。
なぜ45分かというと、10時、になると位が上がり、なんだか罪悪感があるから、というだけの理由である。
これでは音子が不満かもしれない、と最初は心配したが、音子はとにかく俺に引っ付いて要られれば満足なようで、朝が遅かろうが、出かける先が特になかろうが、文句を言うことはなかった。
いつもなら、食事当番が先に起きて朝食を作るが、休みの日はふたりとも同じ時間に起きるようになっていた。特に急がないからだ。
ちなみに今日の朝食は音子が作る番だった。俺の横で、音子もくわっと伸びをする。
「おはようございまふ・・・市ノ瀬さん」
「ああ、おはよう」
そのままとてとてと洗面所に行き、顔を洗う。俺は特にやることがないので、黙ってそれを見ていた。今更ながら、自分の家に自分以外の誰かが動いていることに不思議な感覚を覚える。
音子は手際よく朝食の準備をする。彼女は洋食系が多い。
鮭のサンドイッチ
野菜たっぷりの巣ごもり卵
根菜のコンソメスープ
アイスコーヒー
音子がきてから、明らかに食生活が豊かになった。音子自身が料理上手なのもあるが、俺が作るときも、前は「ひとりだからどうでもいいや」的な感じで、適当に缶詰とビール、みたいな感じだったのが、ちゃんと作るようになっている。
人に食べさせる、食べてもらえるのは、幸せだ。
「おいしい」
思わず言ってしまう。鮭のサンドイッチなるものを初めて食べたが、うまい。
俺の言葉に音子は顔をほころばす。