第8章 禪院の道具と女の本音
【一年後】
「仁美は?」
「… 仁美様は本家からの依頼から帰って来て、お部屋で休んでいます。」
「ふーん…。」
自分が家に帰って来ても、玄関に現れない仁美に直哉は不満の顔で彼女の居場所を聞いた。
続けて女中が「返命を使ったようです。」と言うと、直哉はため息を吐いた。
その一言で仁美が迎えに顔を見せない理由が分かったからだ。
女中は仁美の部屋に向かう直哉の背中に安堵のため息をついた。
仁美が直哉より先に帰って来てくれたから、まだ直哉の機嫌が良いからだ。
本家の案件が長引いた時の直哉の機嫌の悪さは、今の比ではないからだ。
そしてその直哉の相手をするのが、自分たちではなく仁美だと言うことが一番大きい。
直哉の相手は仁美にしてもらうのが、屋敷の人間の中では安泰な時間だからだ。
「帰ったで。」
直哉はいつものように声と共に部屋のドアを開ける。
仁美はベットの上で足を伸ばしながら楽な体勢で座っていた。