第7章 禪院と事情
仁美の体がベットに沈み、直哉の体の重さが加わる。
『禪院家の女はな、愛されるためにおるんやない。』
直哉の言葉が浮かんだ。
たとえ彼の愛がなくても、この結婚に最善を尽くしたかった。
禪院直哉の一番になれるように…。
「…っ直哉っ。」
「……声抑えとき。外に聞こえたらあかん。……俺にだけ聞こえとったら、それでええ。」
直哉に身を委ねて、仁美はそう思った。
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直哉は袴の乱れを無言で整えた。
その仕草には、さっきまでの空気の名残はない。
「……どこ行くん?」
ベットから仁美が問いかける。
直哉は一瞬だけ仁美を見た。
けれど何も言わず、視線を外すとそのまま部屋を出た。
仁美は黙ってそれを見届ける。
この部屋に押し込められたなら、もう返命はなんの価値も無くなったのかもしれない。
仁美はぎゅっとベットのシーツを握った。
最後に残る価値は…。
このまま彼に抱かれるだけ…。
直哉の子を身籠る役目だけだ。