第18章 会長の秘密(ホークス)
ざわざわと、無駄にきらめく夜の街。
「んーもうっ……!あの人歩くの速いなぁ……!」
私は1人で愚痴りながら細心の注意を払って啓悟のあとをつけていた。
時折、雑踏に紛れて見失いそうになるのをなんとか回避して尾行を続けていると、やがて件のキャバクラが見えてきた。
……やっぱり、あそこ行くんか……
路地の物陰からこっそりキャバクラの出入り口を見ていると、1人のキャバ嬢がそこから啓悟に手を振りながら出てくる。
ちょっと遠目だったので会話はよく聞こえないけど、「会いたかった~♡」と嬉しそうに彼に微笑みかけるキャバ嬢。
啓悟も啓悟で、なんだか笑顔だ。
そして、2人は仲良くしゃべくりながら中へと入っていった。
そんな場面を目の当たりにした私は、あの時ショートくんにあんだけ『私で満足できないならその道のプロに』という自論を展開しておきながらショックを隠し切れなかった。
……そ、そんな……
啓悟、マジで私に満足いかなかったんだ……
じゃあ……じゃあさ……
なんで私と結婚したの……?
「繭莉なんだテメェ、あそこに体験入店でもしてぇんか」
傷心に浸っていた所に急に話しかけられて、どこのどいつだと思いつつ振り向くとパトロール中なのかヒーロースーツを着たダイナマイトがいつの間にかいた。
「た、たいけん……?」
「そうだよ。キャバクラなんかガン見しやがって」
ダイナマイトは、顎でキャバクラを指しながら言った。
「ち、違うし……ていうか、ダイナマいつからいたの……?」
「あ?ヘラ鳥がキャバ嬢とイチャつきながら中入ってったくらいからいたわ」
「……ヘラ……?」
一瞬誰の事を言ってるのか分からなかったけど、状況的に啓悟の事だろう。
ヘンなあだ名……あ、いや今はそうじゃなくて……
「……ねぇ、ダイナマ……どう思う?」
「あ?何がだァ?」
私達の事情を知らない人にこんな事を言おうと思うのは、おかしいと思う。
だけど、誰でもよかったのかもしれない。
話を聞いてくれるなら。
「あのひとさぁ……私の事なんてもう、どうでもいいのかな……」
ダイナマイトの目が、一瞬見開かれたような気がした。
「何、言ってんだテメェ」
「だって、私と喋るよりキャバ嬢と喋った方が楽しいんでしょ?」