【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
仁美の背中は、マットの柔らかい感触に沈んでいる。
研磨の手が彼女の頬を包み込み、唇を何度も、角度を変えて重ねた。
1回、2回、3回––––。
数える意味もなく、ただ何度も。
そのたびに、仁美の睫毛がふるえて、彼女の呼吸が熱を帯びていく。
頭の奥に、あの橋の下の夕焼けがよみがえる。
猫と、あの小さな背中と、黒尾の瞳。
あの日、研磨ははっきりと気づいた。
自分が彼女を好きだということ。
そして––––黒尾も同じ想いを抱いているということ。
(あいつ……ほんと、馬鹿だよな。)
黒尾は、結局–––––他の女を好きになった。
幼い頃の約束なんて、知らないふりをして。
そう思うと、胸の奥にひやりとした空洞ができる。
でも同時に––––。
その空洞の奥から、ふわっと何かがほどけるような感覚が湧いてきた。
(……もう、我慢しなくていい。)
抜け駆けなし、なんて馬鹿らしい。
もう黒尾のことなんか考えなくていい。