第110章 身体の異変〜冨岡義勇【R強】
昨夜の嵐が嘘のように晴れ渡った青空の下、義勇の胸は、甘美な背徳感と、取り返しのつかない罪悪感でいっぱいだった。
昨夜の狂気を思い返す。
雨風が激しく吹き荒れる中、媚薬の熱に侵され、理性を失って悶えるゆきを目の当たりにした時、もう抑えきれなかった。
「熱を逃してやらなければ…幸には触れさせたくない」
そう自分に言い訳をしながら何度も、何度も。まるで渇きを潤すように、ゆきを一晩中愛し尽くした。
だが、その愛欲の最中、ゆきがふと漏らした名前が、義勇の胸を鋭くえぐった…。
『無一郎くん……』
婚約者である時透の名前
自分が求めてやまない女の瞳が、暗闇の中で別の男を求めている。
嫉妬と独占欲に狂いそうになりながらも、義勇はある残酷な手段を選んだ。
ーバレないように、声を発してはならない…そして、夢心地のまま時透に抱かれていると勘違いしているなら、いっそこのままー
義勇は決して自分の声を漏らさず、手元にあった布でゆきの視界を塞いだ。
媚薬から解けかけて意識が混濁する中、彼は時透無一郎のふりをして抱き続けた。
ゆきの吐息が自分のものになり、心地よい絶頂を迎えるたび、胸の奥底で黒い優越感と激しい痛みが交差した。
すべてが終わり、正気を取り戻した時、義勇はこの秘密がもたらす結末の恐ろしさに気づいた。
真実を知れば、ゆきは深く傷つくだろう。
だからこそ、義勇は夢で終わらせるために情事の形跡を綺麗に隠した。
皮肉にも、その隠蔽には幸が協力してくれた。
幸はゆきに好意を寄せており、「彼女の傷付く姿をみたくない」という思いから、義勇に口裏を合わせてくれたのだ。
「幸が口裏を合わせてくれている…これで、すべては幻になるはずだ」
しかし、ゆきの身体には、義勇が刻み込んだ熱と快楽の生々しい記憶が残っていた…。
部屋の隅で今も思い悩んでいるであろうゆきの姿を想像すると、胸が締め付けられるようだった。
「すまない、ゆき…混乱させて…」
微かに呟いた謝罪の言葉は、朝の冷たい風にかき消されて、愛おしいゆきの耳にも届くことはなかった…。