第4章 薄紅色の恋(冨岡義勇)
水柱様のお手を煩わせてはいけないと、こちらに両親を呼び寄せたものの、屋敷に呼んでいただき、3人で恐縮しながら屋敷の前に立っていた。
「紗耶…元気か…?」
つい今しがた到着した父は相変わらず小さく、腰が前よりも曲がったように感じた。
「少し…痩せたんじゃない…?ちゃんと食べてる?」
母も相変わらず、私の体の事ばかり心配する。
『食べてるよ、大丈夫だよ…今日は遠くからありがとう。』
道博山はここからかなり遠方だ。
2人とも、老体に鞭をうって朝早く馬車に乗り、ここまで来てくれた。
一生懸命ここまて来てくれたのに、今から水柱様に尋問されるのだ。
「紗耶どうしたの…?なんだか顔色が良くないわ。」
母が心配したので、急いで明るくする。
『そんな事ないよ。元気よ。さぁ、入って。』
今日は隠は私以外一人もいない。
水柱様が2人に話したいことがあると文で伝えたので、案の定勘違いした2人は一張羅を着てきた。
それが申し訳なかった…
『水柱様、父と母が参りました。
中にお邪魔させていただきます。』
屋敷の中に2人を通し、客間に通すと、隊服を着た水柱様が待っていた。
「遠くまですまなかった。元隠だと聞いているが…」
座るように促されると、父が深々と頭を下げた。
「さようでございます、水柱様。
わたくしは元隠をしておりました。今日はこのような立派なお屋敷にお呼びくださり、ありがとうございます。娘の事も…大変お世話になっております。」
母も手をついて深々と頭を下げた。
「こちらこそ、いつも隠には世話になっている…」
そう言うと、水柱様は黙って机を見つめた。
「単刀直入に言おう。この娘…
この娘は昔、狭霧山にいたのではないか?」
「…っ……」
「昔…俺が狭霧山で共に過ごしていた娘と瓜二つだ。
体のホクロも…どういった経緯で彼女を育てることになったのか知りたい。」
父はしばらく畳を見つめ、口を開いた。
「水柱様の仰る通り…紗耶は狭霧山の川下に流れ着いた所を、私達夫婦が助けたのです。」
『…っ……お父さん…』
それから父は、私の知らない話をしだした。
お母さんを見ると、俯いて申し訳なさそうにしている。