第1章 群青色の恋(冨岡義勇)
『お待たせしました。』
娘の持ってきた団子は見事な艶をしており、小ぶりでも上品な甘さだった。
団子も焼いてあって香ばしく、社交辞令でも何でもなく、今まで食べた蜜団子の中で群を抜いて美味だった。
「美味いな…」
2本の団子はすぐになくなり、緑茶を飲み干すと刀を持って店を出ようとした。
「勘定を頼む…」
先程の娘に声をかけると、
『あっ…少々お待ち下さい。』
と言い、パタパタと奥に入って行った。
すぐに出てきた娘は割烹着を外して手に持っており、染めた頬で俺に言った。
『あのっ…少しだけ…お話できませんか?』
俺は驚いたが、どの道予定という予定もない。
山に入って時間をやり過ごそうとしていたため、すぐに頷いた。
「構わないが…」
娘はとても小柄だった。
鬼殺隊の中では俺も決して背が高い方ではないが、娘の横に並ぶと、それがよくわかった。
『あの…軍人様、よろしければお名前を…教えて頂けませんか?』
「冨岡義勇だ。軍人ではないがな…」
帯刀しているため、軍人だと思ったのだろう。
『…っ…失礼致しました。では…皇室のお方か、華人のお方でしょうか?』
帯刀する者の事をよく知っている。
町の娘にこれ程の知識があるだろうか…
「…皇室や華人は一人では歩かないだろう…
俺はただの…愛刀家だ。」
鬼殺隊は政府非公認組織。
何か聞かれた時は、こう答えていた。
『そうだったのですか。
…もしよろしければ…義勇様とお呼びしてもよろしいでしょうか?』
「構わんが…」
俺は娘をちらりと見た。
「お前の名は何というんだ。」
自分で聞いて驚いた。
女性はおろか、女子にすら名を尋ねた事など一度もなかった。
聞かれたから聞いただけ。
その程度の話。
その時はそう…思っていた。
娘は明るく、よく話した。
器量の良さから初めの印象も悪くなかったが、品良く笑う様子にも好感が持てた。
軍人の妾だった母親が自分を産んだこと。
父はよくこの町に来てくれたこと。
父も母も鬼に殺され、現在は天涯孤独な事。
俺の住む場所の事。
仕事の事…
『では、義勇様は刀をお好きになって、訓練してあのように鬼をも倒せるようになったのですか…?』
「まぁ…そんなところだ…」
『………』
「どうした…?何か腑に落ちないか…?」