第1章 群青色の恋(冨岡義勇)
「そうですか…それは何とおめでたいことでしょう。
私も…嬉しくてたまりません。」
2人並んで女将に結婚の事を伝えると、涙を浮かべて喜んでくれた。
「でも…淋しくなるわね。雫ちゃんはもう、娘のように感じていたから…ここを出ていくなんて…」
『女将さん…』
オロオロとする雫。
「女将、またすぐに雫と共に会いにくる。俺も世話になったからな…しょっ中顔を出そう。」
雫は手放したくない。
「えぇ、そうですよね。わかっておりますとも。
所で昨日はどちらに宿泊されたのですか?」
涙を浮かべていたのが嘘だったかのように、女将がそんなことを言うものだから…
ガシャンっ
『えっ…あの…あ…ごめんなさい…』
赤い顔で焦って湯呑みをひっくり返し、布巾を取りに立ち上がる雫。
あらあら、と女将は微笑んでいる。
女将にも、全てお見通しか。
「冨岡様を…」
「……?」
「昔から見ていた私だからわかる事なのでしょうが…」
「今まで見てきた中で、一番穏やかなお顔をされてらっしゃいます。」
優しく微笑む女将に言った。
「あぁ…そうだろうな。
だが…大丈夫だろうか。今の俺は…雫と離れたくないと思ってしまっている。死にたくはないと…
その気持ちが隙を生むのではないかと少し不安だ。」
ふふっ…と女将は笑った。
「守りたいと思う人間がいる人が…
一番強いと私は思いますよ。」
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数日後
『女将さん、今まで大変お世話になりました。』
「雫ちゃん、元気でね。またいつでも遊びに来てね。忘れないわよ。」
雫と女将が涙の別れをしている間に、俺は自分の荷と雫の荷を馬車に積み込んだ。
雫の足で俺の屋敷までは難しい。故に、朝早くに出発することになった。
この数日で俺は改めてこの町に滞在する任を解かれ、 再び屋敷から出発する任務を命ぜられた。
お館様は俺達の事を大層喜んでくれた。
これからお館様のお屋敷に雫を連れて行くことになっている。
「女将、そろそろ行くとする。またすぐに戻る…」
「承知致しました。あ、雫ちゃん、ちょっと…」