第1章 群青色の恋(冨岡義勇)
「痛みを誰に言った所で同じ事。鎮痛剤を多めに飲んで、ゆっくり休め。」
はいぃ…と、骨折した隊士は泣きそうな顔をして縮こまった。
"めちゃくちゃ可愛くね?"
廊下を歩きながら、先程の隊士が言っていた言葉を思い出した。
雫は綺麗だ…と思う。初めて会った時もそう感じたし、実際団子屋には雫目的で来ているような奴も多かった。
だからこそ、たちの悪い輩に目をつけられ、ひどい目に遭ったのだ。
『…義勇様っ…お帰りなさいませ。
そろそろお戻りになられると思っていました。』
「ただいま戻った…それは?」
雫の手には膳が握られ、食事が敷き詰められていた。
『今日は隊士の方がみえていて、昼から何も召し上がっていないとの事なので、多めの夕餉を女将さんが作ってくださって…今運ぶ所です。今日は初めて卵焼きを作ってみました。』
ふふっ…と笑う雫の膳には茶色い卵焼きが乗っていた。
「………俺が持っていこう。」
『えっ…?いけません、そんなっ…』
「2人分だろう?もう1つを早く…」
『あ…はいっ。』
スパンっ
そこからはさっきの繰り返しのようなやり取りがあり、食事を出すと一言添えた。
「卵焼きは…どんな味であっても残すな。」
部屋から出ると、雫が立っていた。
『ありがとうございます…義勇様、急にどうされたのですか?』
「…特に理由はない。お前が一人で大変なのではと思っただけだ。」
大嘘つきだな。
自分で、自分を嘲笑する。
『おにぎりを作ってあります。
よろしければお部屋にお持ちしますが…』
「あぁ…頼む。」
雫がおにぎりを運んできて部屋を出ようとした時、とっさに呼び止めた。
「雫…」
『っはい…』
「…辛くないか?深夜に食事を作る事や、隊士の手当ては。」
『全くそんな事はないです…
むしろ…誰かのお役に立てる事が嬉しいです。』
そう笑う雫を見て、俺も口角が上がるのがわかった。
『義勇様……』
「何だ…?」
『義勇様は笑われると…更に素敵ですね…』
頬を染め、そそくさと部屋から出ていく雫。
更に素敵…
更にと言うことはいつもそう思ってくれているのか。
いや…それはないな。