第57章 歪んだ愛、終わりの始まり ※※
(……もう……いっそ……)
そこまで思って――止める。
かすかに。
本当にかすかに残っているもの。
守られてきたもの。
壊れたはずの心の、欠片。
ぎり、とオールフォーワンを睨む。
A「……」
その目を見て、首を傾げる。
A「なんだ、その目は」
苛立ちを隠せない。
A「なぜ死なない」
「……はぁ……っ……」
答えられない。
言葉が、出ない。
ただ、消えかけた瞳の奥に、ほんのわずかにまだ火が残っている。
A「……まあいい」
興味を失ったように言う。
A「さっきのが最後のひとつではあったが……」
すっと新たに取り出されたもの。
細い、鋭い針。
注射器だった。
液体が、ゆっくりと揺れる。
オールフォーワンの口元が、歪む。
A「経口投与のは、ね」
くつくつと笑う。
の瞳が、わずかに見開かれる。
「……い……や……」
オールフォーワンは、ゆっくり近づく。
逃げ場は、ない。
A「安心するといい」
低く、甘く。
A「これは、もっと確実で、早い」
冷たい針先が、肌に触れる。
恐怖が、遅れてやってくる。
「……っ……」
力が入らない。
それでも、わずかに抵抗する。
だが――ぷち、と。
音がした。
針が、突き刺さる。
じわり、と遅れて何かが広がる。
血の中をゆっくりと、確実に。
「……っ……」
最初に来たのは、熱だった。
体の奥から、じんわりと滲み出すような熱。
冷え切っていたはずなのに。
内側から、焼かれるように熱い。
「……ぁ……」
小さく、声が漏れる。
呼吸が、乱れる。
さっきまでとは違う。
苦しさとは、別の。
息が浅くなり、視界が揺れる。
力が入らない。
指先すら、動かない。
思考も、まとまらない。
(……なに……これ……)
理解したくないのに、わかってしまう。
体が、言うことを聞かない。
「……や……」
止めたいのに、止められない。
じわじわと何かに侵されていく感覚。
呼吸が、熱を帯びる。
心臓が、うるさい。
涙がぼたぼたと、床に落ちる。