第52章 奪われた夜、青い炎 ※
夜の街。
ホークスは、人目につかないビルの屋上にいた。
風が、強い。
ホ(……最悪だな、ほんと)
手袋を外し、指先を見つめる。
ホ(抱きしめたかった。連れて帰りたかった。……上書き、したかった)
思考が、そこまで行って自分で止める。
ホ(ダメだ)
監視されている。
ホ(……あいつが、乱暴しなかったのは救い、か)
でも。
ホ(それで安心できるわけ、ないだろ)
胸の奥が、ひどく痛む。
あの姿。
乱れていない服、澄んだままの目。
ホ(……それが、余計に)
“奪われた”という事実だけが、確かに残っている。
ホ(俺は……何してた)
守るって決めたのに。
危険だって、わかってたのに。
ホ(……出会わなきゃよかった?)
一瞬、よぎる。
でもすぐに、否定する。
ホ(……違う)
出会えたから、知れた。
あの人が、どれだけ優しくて、どれだけ強いか。
ホークスは、空を仰ぐ。
ホ(俺が折れれば…日本が…終わる)
歯を食いしばる。
感情を、全部押し殺して。
笑顔の仮面を、思い浮かべて。
ホ(……明日も、いつも通りだ)
ヒーローとして。
協力者として。
“何も知らない男”として。
それが、を守るための、が笑って暮らせる世界を作るための、唯一の形だから。
たとえ、自分が壊れても。