第21章 君に贈る、ひとときの奇跡
クリスマスソングがゆるやかに流れ、部屋には笑い声と甘い香りが満ちていた。
紙コップの中から立ちのぼる湯気と、瞬くイルミネーション。
それらが溶け合うように、優しい夜が、そこにあった。
そんな中で、想花がふと立ち上がる。
笑い声が自然と収まっていく。
『……ねぇ、ちょっとだけ、聞いてほしいことがあるの』
その声は小さくて、でもちゃんと届いていた。
真剣な表情に気づいたクラスメイトたちが、自然と耳を傾ける。
『……みんなに、渡したいものがあるの。ほんの、ちょっとしたものだけど……』
ポケットにそっと指を入れて、彼女はひとつの巾着袋を取り出した。
きゅっと閉じられた口をゆるめて、中からひと粒──
淡く光る、小さな結晶をすくい上げた。
その結晶は、まるで夜露が凍ったみたいに澄んでいて、
光を受けて、ほんのりと内側から輝いていた。
『これを……ひとつずつ。持っててほしいの。』
そう言って、想花は目の前にいる上鳴の手のひらに、ひと粒の結晶をそっと置いた。
「わ、なにこれ……めちゃくちゃ綺麗……!」
「キラキラしてる……ほんとに石なの?」
「宝石みたいーっ!想花が作ったの? すごすぎ!」
みんなが目を輝かせ、感嘆の声をあげていく。
まるで子どものように無邪気な笑顔で、手の中の結晶を覗き込むその様子に、想花もふっと息をゆるめた。
──でも、全員がただの“綺麗な贈り物”として見ていたわけじゃない。
爆豪は、何も言わず、結晶を受け取ると、そのまま拳をぎゅっと握りしめた。
言葉を飲み込むようにして、彼女の目をじっと見ていた。
轟は、それを手の中で転がしながら、しばらく黙っていたあと、小さくつぶやいた。
「……これは、ただの綺麗な石じゃないな」
緑谷は、結晶を見た瞬間、何かに気づいたように表情を変え、想花の方へ目を向ける。
目が合った。彼女は微笑んだ。
それだけで、彼には言葉がいらなかった。
そして相澤は──
巾着袋の中を、ちらりと一瞥しただけでわかった。
(あの時と同じだ。……夏、あいつが渡してきた“あれ”と。)
目を細め、ほんのわずかに息を吐く。
けれど何も言わない。問いもしない。
ただ、その重みを知る者として、黙って彼女の選択を受け止めていた。