第23章 「可惜夜に眠る 後編Ⅰ」
誰かの死を呪いにしないこと。
残された人が、亡くなった人からもらった愛を抱きしめて生きていくこと。
それは、お母さんが教えてくれた花冠の意味。
私は先生の手の甲に、そっと自分の手を重ねた。
そのまま、確かめるみたいに指を絡める。
「ずっと、私のせいだって思ってたけど……」
声が震えてしまう。
それでも、ちゃんと言葉にしなきゃ。
もう一度深く、息を吸った。
「でも……それだけを抱えて、生きていたくないです。お父さんとお母さんがくれたもの、ちゃんと忘れないで……笑って、生きていきたい」
私が笑っていることが、二人への一番の恩返しになるなら。
この悲しみごと抱えて、前を向いて歩いていきたい。
「私……お父さんとお母さん、探したいです」
ずっと、怖くて逃げてきた。
あの日から、一度もあそこに近づかなかった 。
だけど、このままじゃ二人をずっとあの冷たい海の底で、置いてきぼりにさせてるのと同じだから。
「……二人の帰りを、ちゃんと待ちたい」
私がここにいて、笑って、二人を想っていること。
それが、お父さんとお母さんの帰る場所になるなら。
目尻に残った涙を手の甲で拭った。
「……でも、八年も放っておいたから。二人とも、すごく怒ってるかもだけど」
ずっと怖がって、逃げていた弱虫で。
自分勝手な娘。
きっと二人は、呆れて溜息をついているかも。
そう思うと、情けなさでまた少し泣きそうになって。
先生の胸元に額を押しつけた。
すると、大きな両腕が私の背中に深く回された。
隙間を埋めるみたいに、ぎゅっと強く抱きしめられる。
「仕方ない。僕も一緒に怒られてあげよう。の大事な家族は、僕にとっても大事だって言ったでしょ」
先生は私を安心させるように、背中を撫でてくれた。