第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
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バスは再び走り出した。
山道を下り、長いトンネルをくぐり抜けた――その瞬間。
「――わぁ……」
視界いっぱいに、鮮やかな青が広がった。
太陽の光を反射して、きらきらと輝く海。
白い砂浜、どこまでも続く水平線。
「すげぇぇぇ!! マジで海だ!!」
「キャーッ! これよ、これ!!」
虎杖くんと野薔薇ちゃんが窓に張り付いてはしゃいでいる。
私も、目を離せずにいた。
重たくも、暗くもない。
私の記憶にある海とは、まるで違っていた。
(……きれい)
気づいたときには、「怖い」より先に、その言葉が浮かんでいた。
「はい、ここが僕の別荘でーす」
バスが停車したのは、海を見下ろす高台に建つ、真っ白な邸宅の前だった。
コンクリートの打ちっぱなしに、壁一面のガラス張り。
青い空と海を背景にそびえ立つその建物は、まるでどこかの美術館か、ホテルみたいだった。
野薔薇ちゃんが、わなわなと震えながら建物を指差した。
「まさかとは思うけど……BBQ終わったら、あのボロ宿に帰るなんて言わないわよね? こっちに泊まるのよね?」
全員の期待のこもった視線が、先生に突き刺さる。
「え? ダメに決まってるじゃん。ここはあくまで遊び場」
「寝泊まりするのは、君たちが一生懸命ピッカピカにした、あ・そ・こ♡」
先生は悪びれもせず、へらへら笑っている。
「ま、とりあえず着替えよっか! みんな、埃くさいからさ。着替えはこっちのゲストルーム使っていいよ。着替えたら、ビーチに集合ね!」
「……あいつ、いつか絶対刺してやる」
真希さんが低い声で呟き、伏黒くんも深く頷いている。
「行くわよ! 悔しいけど、今は楽しんだもん勝ちよ!」
「う、うん!」
野薔薇ちゃんに手を引かれて、私もゲストルームへと向かった。
(……着替え……水着……)
カバンの中に入っている、あの布面積の少ない水着を思い出す。
(……ほんとに、着るの?)
先生の前で? みんなの前で?
想像しただけで、顔から火が出そうだった。