第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
「ここの施設の“管理責任者”……五条先生になってますけど」
その瞬間。
全員の動きが止まり、ざわっ……と視線が黒板に集まった。
そこには確かに、『管理者:五条悟』と書かれていた。
真希さんが目を細め、低く唸るように言った。
「……おい、悟。まさかお前。私たちに“タダで”大掃除させようって腹じゃないだろうな?」
伏黒くんも続けて言い放った。
「前に伊地知さんが言っていたことがあります。五条先生が管理してる演習場が荒れ果てていて、学長から怒られてるって」
「……」
その言葉に、場の空気が凍りつく。
先生はあからさまに口笛を吹いて、目線を泳がせた。
「さっっいってー!!」
野薔薇ちゃんの絶叫が、ボロ宿の梁を震わせた。
「生徒を何だと思ってんのよ! 便利屋じゃないのよ!! このバカ教師っ!!」
言うが早いか、野薔薇ちゃんは足元のスリッパを掴んで、先生に向かって全力で投げつけた。
それを合図に、堰を切ったように全員が動き出す。
「先生、さすがに引くわ!」
虎杖くんが、飲み終わった空き缶を投げる。
「明太子!」
狗巻先輩が小石を投げる。
「教育者としてどうかと思うぞ!」
パンダ先輩が黒板消しを投げる。
四方八方から飛んでくる“怒りの礫”。
けれど――
それらは全て、先生の鼻先数センチのところで、見えない壁に阻まれたように静止した。
スリッパも、空き缶も、チョークの粉が舞う黒板消しも。
宙に浮いたまま、微動だにしない。
「そんなことしても、無駄無駄~」
先生は余裕しゃくしゃくで、浮いているスリッパを人差し指でつついた。
「っの野郎……!!」
「術式解けっ……」
真希さんと野薔薇ちゃんがギリリと歯ぎしりをする横で、伏黒くんも心底嫌そうな顔をした。
圧倒的有利な立場を利用して、先生は反省するどころかケロッとしている。
この人、本当に最強だけど……最強に大人げない。