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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第15章 「その悔いは花冠に変わる」


「ボンッて、爆発音みたいな音がしてな。慌てて消火器持って駆け寄ったが、あれはもう手に負えなかった。あっという間に火が回って……乗客が叫び声あげながら逃げ惑って、泣きながら……」



男は唇をかみ、短く言葉を飲み込んだ。

 

「それでも、なんとか冷静に誘導しようとしたが、もう無理だった。火の熱で船体が傾いて……そのまま、何人も、海に投げ出された」

「……」

「浮き輪を投げても間に合わねぇ。
 目の前で、大人も子供も――次々と、海に沈んでいったんだ」

 

ぐっと奥歯を噛みしめるように、男は目を閉じた。

 

「……あれは、地獄だったよ」

 

重く落ちるその言葉に私も息を詰めるしかなかった。
それは、事故現場を直接見たものでしか言えない生々しさがあった。

 

「俺は……助かったけどな。たまたま近くに浮かんでいた浮き輪に掴まって――」

 

言いかけたところで、男の口がふっと止まった。
苦いものを喉の奥に押し込むように、男はゆっくりと視線を逸らす。


どうしたんだろ?
辛いことを思い出させてしまったのかな? 
私はその空白の続きを、思わず問いかけてしまった。

 

「……何か、思い出しましたか?」

 

声をかけた瞬間、男のまなざしが鋭く揺れた。
だが、それもほんの一瞬のことだった。

 

「――いや。なんでもない」



そう言って男は口を噤み、また煙草に火をつけた。
今度は成功した。
火種がかすかに揺れる。
 
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